導入事例
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自動車部品OEM
株式会社SUBARU


株式会社SUBARUは、2030年のビジョン達成に向け、2023年から2028年までの5年間で「安全で高品質なクルマづくり」を目指し、お客さまの期待を超える価値を提供するため、積極的な変革を推進しています。その中核が「モノづくり革新」です。開発日数・部品点数・生産工程のそれぞれを半減させることで、世界最先端のものづくりを実現し、開発スピードを飛躍的に向上させ、市場の変化に対応できる次世代技術・新製品作りを目指しています。また、SUBARUは「内製へのこだわり」を貫き、主要部品やコア技術を自社開発することで、「走りの楽しさ」と「圧倒的な安心感」の両立を図り、ブランド独自の価値を支える技術力の強化にも取り組んでいます。
変革を推進するため、各課に「モノづくり革新」担当者を任命したものの、現場では日々の業務に追われる状況が続いており、設計プロセスの属人化および設計の手戻りが常態化していました。
1.設計プロセスの属人化
車両開発の段階で生じた課題や検討履歴、棄却案およびその経緯は記録に残らず、過去の知見はベテラン設計者の頭の中にのみ蓄積されていました。また、担当者ごとに経験が異なり、若手設計者は常に複数のベテラン設計者によるレビューやアドバイスを受けるなど、属人化したプロセスとなっていました。
2.設計の手戻り
実績のある過去機種の構造を参照しながら設計する、標準化されていないプロセスでは、意匠や性能要件が変更されるたびに断面や形状を作り直したり、成立性の再確認が必要となっていました。そのため、量産直前に要件漏れが判明し、すでに仕様が確定している周辺部品にも影響が生じるなど、大規模なやり直しが発生することが散発的に、また常態化していました。

「自動車開発の分野では、技術革新が日々加速度的に進んでおり、私たちはその変化に柔軟に対応しながら、お客さま一人ひとりの多様なニーズに応える価値創造に力を注いでいます。市場の要求が高度化・複雑化するなか、より高品質で効率的な製品開発を実現するためには、既存の技術資産を整理・集約し、それらを有効に活用することが不可欠です。これにより設計業務の効率化と開発プロセス全体の最適化を推進し、持続可能な開発体制の構築が求められました。
また、目標性能を確実に達成するためには、設計段階で織り込むべき要件が非常に多岐にわたります。たとえば、機能面や安全性、耐久性、環境対応などの基本的な性能要件に加え、過去に発生した不具合への再発防止策を反映することも重要です。従来のやり方では、これらすべての要件を検証するのに時間がかかることが課題であり、同様の課題を経験した設計者に質問するか、イチから検討を行う状況でした。」
技術本部 ボディユニット設計部 内外装第四課
椎名 直人 様
こうした課題を解決するため、外装設計課※1に常駐するSOLIZE PARTNERSの設計エンジニアは、誰でも同じ品質で設計できる仕組みづくりとして、「設計標準化」と「CADテンプレート構築」を提案し、着手しました。
はじめに行うのは、設計標準化の対象部位の選定です。
設計負担が大きく、意匠・仕様変更の影響を受けやすい「ルーフスポイラーサイド」と「サイドパネルアウター」を対象に選定しました。これらの部位は構造が複雑で、他部署部品との境界に位置するうえ、意匠や仕様の変更によって形状の作り直しや関係部署との調整に多くの時間と労力を要し、データ作成ミスや修正が頻発していました。
※1:ルーフスポイラーサイドやルーフレール類などの外装部品の設計を行う
SOLIZE PARTNERSの設計エンジニアは、SUBARUのベテラン設計者へのヒアリングを重ね、ノウハウや過去機種の調査を実施し、判断基準や上下限値も精査しました。寸法設定の経緯や根拠が一目でわかる設計標準図の作成に向け、開発プロセスや判断基準の一つひとつを可視化し、設計標準図の作成を主導しながら整備していきました。
本活動を通じて、これまで属人化していたノウハウの見える化やその標準化が設計品質の担保に不可欠であることを実感し、メンバー全員の意識や風土にも変化をもたらしました。

「ルーフスポイラーサイド」と「サイドパネルアウター」の端面部に対し、寸法ルールや過去の不具合を反映した柔軟なCADテンプレートを構築しました。意匠変更を前提とした設計により、1開発あたり100時間以上かかっていた3Dモデル作成を数時間に短縮し、工数を92.8%削減しました。
また、調査・確認プロセスやデータ作成の繰り返し工数も大幅に削減するとともに、完成車への取り付け状態や車体と部品の関係ごとに情報を整理することで、検索性と実務性の両方を向上させ、誰が担当しても同じ品質で設計できる仕組みを構築しました。

「豊富な設計経験に基づく高精度な寸法調査により、CADテンプレートの信頼性向上に大きく貢献いただきました。特に、意匠形状が頻繁に変更される設計環境でも、柔軟かつ的確に対応できる高度なCADスキルを活かし、テンプレートの汎用性と操作性向上に工夫が凝らされていました。また、単なる仕様再現にとどまらず、積極的な機能提案を通じて、設計効率と業務標準化にも寄与しています。」(椎名様)
SUBARUでは、設計標準とCADテンプレートの活用を現場主導で定着させ、単なるツール導入にとどまらず、組織全体の継続的な改善活動へと進化しています。その中心となっているのが、設計者で構成された「CADテンプレートWG※2」です。現場の課題やニーズを起点に、テンプレートや標準の見直し・改善をスピーディに行う仕組みが構築され、テンプレートは「導入して終わり」ではなく、「進化し続ける」設計ツールとして機能しています。
さらにSUBARUは、標準図を単に導入するだけではなく、自ら作成・運用することを目指しました。
その実現に向け、SOLIZE PARTNERSは顧客設計者が作成した標準図草案に、判断基準や寸法の明確化、周辺部品との整合性、実用性検証などの観点から72件の提案と反映を行いました。こうして完成した標準図は、実用性と信頼性を兼ね備えると同時に、設計者自身が維持・進化できる仕組みを確立しました。これにより属人性の解消と設計品質の再現性を向上させています。
※2:ワーキンググループ

今後は、このWGを中心にほかの設計領域へ展開し、SUBARU全体の設計力強化へとつなげていく予定です。「自ら動かし、自ら進化させる」という意志ある現場が、SUBARUのものづくりの未来を形づくっています。
「今回の活動に際し、 『時代や外部環境の変化に左右されない【SUBARUらしさ】の深化』を実現するため、 【開発スピードアップ】と【高品質のものづくり】の両立という難題に対し、開発手法の市場トレンドやツール・プロセスの進化、今の外装設計部にとっての最適解について何度も協議を重ねてきました。その第一歩として、【標準化プロセスおよび風土の定着】【CADテンプレートの活用】をご提案・実行にご尽力いただき、誠にありがとうございました。
BUCA時代を乗り切るため、タコつぼ思考に陥らず、外部から自身をふかんする第三者視点を持つパートナーと連携し、常にお客さまにとってのベストを目指すものづくりの実現に向けて進化し続ける非常に良いチャンスを得られたと実感しています。」

技術本部ボディユニット設計部
内外装第四課
課長 鈴木 祥靖 様
「変化の激しい時代において、良いものをより早くお客さまに提供することは、我々設計者の最大の使命だと考えます。これまでの設計開発には属人化した領域が多く、ベテラン設計者の知見に支えられていた部分も多くありました。今回、SOLIZEの設計エンジニアから助言をいただき、暗黙知であった知見を標準図としてナレッジ化することができました。
また、標準図をもとにしたテンプレートにより業務が効率化されるとともに、設計品質の安定にもつなげることができました。携わった皆さまには、この場を借りて感謝申し上げます。
これからはDXを活用した従来にない開発プロセスを構築し、魅力的な商品をいち早く開発することが急務だと考えます。市場ニーズを捉え、自由度の高い意匠開発を実現するため、これからもチームメンバーとさまざまなアイデアを出し合い、お客さまの笑顔をつくる会社へと成長していきたいと思います。」

技術本部ボディユニット設計部
内外装第四課
担当 中澤 健治 様
「SUBARUが掲げる『モノづくり革新』と『価値づくり』の実現には、既存技術や工程の圧縮による業務効率化が不可欠です。しかし、日々の業務に追われるなかで、テンプレート作成に必要な仕様書を網羅的に整備することは困難であり、設計経験を持ち、意見を交わしながらより良い成果物を共に作り上げるパートナーの存在が求められていました。常駐の千葉氏の提案を契機に、SOLIZE様との協業が始まり、ツールの提供に加え、設計業務の課題にも焦点を当てた実践的な提案をいただきました。
本活動は単なる業務改善にとどまらず、組織内で理想的な業務の進め方や設計のあり方を再認識・共有する機会となり、今後の標準化や人材育成にもつながる重要な取り組みとなりました。」

技術本部ボディユニット設計部
内外装第四課
椎名 直人 様
「CADテンプレートの導入と設計標準図の整備により、設計業務の効率化と設計品質の再現性向上が着実に進んでいます。CADテンプレートの導入および設計標準図の整備を推進したことにより、図面作成時の初期設定や形状の統一が実現し、設計者間の作業のバラつきも大幅に軽減されると思います。社内の設計ルールが明確化されたことで、協力会社との連携もよりスムーズになることが期待できます。また、標準図の活用により、設計ミスやレビュー工数の削減といった具体的な成果も期待できます。
今後は、これらの基盤を活かし、BIMやほかの設計支援ツールとの連携を視野に入れ、さらなる業務の高度化を目指してまいります。」

技術本部ボディユニット設計部
内外装第四課常駐
SOLIZE PARTNERS株式会社
千葉 忍
※所属部署・役職は本活動推進時のものです
※3DEXPERIENCE、Compass アイコン、3DS ロゴ、CATIA、BIOVIA、GEOVIA、SOLIDWORKS、3DVIA、ENOVIA、EXALEAD、NETVIBES、MEDIDATA、CENTRIC PLM、3DEXCITE、SIMULIA、DELMIA およびIFWE は、アメリカ合衆国、またはその他の国における、ダッソー・システムズ (ヴェルサイユ商業登記所に登記番号B 322 306 440 で登録された、フランスにおける欧州会社) またはその子会社の登録商標または商標です。
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