不活性ガス種による造形品の特性の違い

17-4PH(SUS630相当)は析出硬化型ステンレス鋼で、時効硬化処理により硬度が上がります。

硬度を上げるのは、マルテンサイト相(α相)で、オーステナイト相(γ相)は硬化に寄与しないため、γ相が多い状態では、時効硬化処理をしても硬度が上がりません。α相とγ相の比率に関しては、金属3Dプリント(Additive Manufacturing)する際、アルゴン(Ar)ガスを使うか、窒素(N2)ガスを使うかにより、その比率が変化することが報告されています(Murr et al., 2012)[1]。

N2ガスでアトマイズされた粉末は、γ相を多く含んでいます(Fig.1, [1])。


Fig.1 N2ガスアトマイズ粉末のX線回折スペクトル


この粉末を使用して造形したパーツの組織は、Arガス環境で造形した場合はα相になり、N2ガス環境で造形した場合は、ほぼγ相になります(Fig.2, [1])。


Fig.2 造形物のX線回折スペクトル Arガス


Fig.2 造形物のX線回折スペクトル N2ガス


N2ガス環境で造形した造形品は、γ相をα相に変態させるため、固溶化処理を行ってから時効硬化処理を行います。一方、Arガス環境で造形した造形品は、固溶化処理を行わず時効硬化処理を行っても、硬度を上げることができます。


参考文献

[1] Lawrence E. Murr, Edwin Martinez, Jennifer Hernandez, Shane Collins, Krista N. Amato, Sara M. Gaytan, Patrick W. Shindo, 2012, Journal of Materials Research and technology, 1(3), 167-177​​​​​​​

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