導入事例

量産塗装ラインで使用するマスキング治具の品質を3Dプリンター技術で改善

部品加工・サプライヤー

相模塗装株式会社

車体の外装パーツに施すUV塗装がマスキング治具の隙間から侵入し、塗装不良が発生

SOLIZEによる不具合の原因究明と恒久対策の検討

同社は塗装不良の恒久対策として、SOLIZEの3Dプリンター活用設計(Design for Additive Manufacturing:DfAM)とAM技術導入支援サービスを採用しました。

不具合の原因究明

今回、塗装不具合が発生した部品は、2021年秋に新発売された高級コンパクトカーのフロントグリルまわりの樹脂製エクステリア部品です。車両のデザイン・アイデンティティを担う重要パーツのため、PC透明色の成形品の表面に高透明なUV塗装を施し、裏面は艶消しブラック塗装を施すといった高品質・高精度な塗装が求められます。

SOLIZEは塗装工程や治具の状況を詳しく調査した結果、既存の光造形製治具が繰り返しのUV光と高温(140℃)の曝露により反り変形が起こり、製品との間に隙間が生じたことでUV塗料が裏面に侵入したものと分析しました。

また、成形品の精度に個体差があり光造形製治具のプロファイルを製品にフィットさせるために幾度か手作業で修正しており、経時的変形と修正により最適な状態がわからない状況でした。

提供:日産プリンス神奈川販売株式会社 座間店

恒久対策の検討

SOLIZEは該当の製品、治具、キャリアと治具の3Dデータを預かり、対策を検討しました。その結果、不具合発生の原因を以下のように仮定しました。

  1. 断続的なUV光照射により光造形樹脂の硬化進行が起こり継続的な収縮と変形が生じた。
  2. 高温140℃⇔常温の繰り返し曝露により変形が生じた。
  3. キャリアへの取りつけ穴が治具の中央付近に寄っており、先端部の反り変形を抑制できていない。

対策は以下の内容で行いました。

  1. 治具材料と製造方法の変更
    • 治具材料としてUV光や高温環境に耐性のあるPA12を選定。製作は数百単位での速やかな治具入れ替えを想定し、HP Jet Fusionを選定。
  2. 治具形状の設計変更
    • 光造形製治具の3DデータをCAD上で設計検討し、以下の対策を実施。
      • 治具全体の変形対策と新治具入れ替えコスト低減のために、外形形状をオフセットした均一かつ大幅な肉抜きを追加。
      • 反り変形を防止するため、締め付け穴位置を両先端部に移設。(キャリアへの穴追加を要請)
      • 製品の寸法測定と取り付け性を考慮した外形プロファイルの見直し。
  3. 対策治具の試作、調整
    • 設計変更した3DデータをHP Jet Fusionで造形し、製品とのフィット状態を確認して微修正。
  4. 対策品の製作
    • 外径プロファイルを修正した3Dデータで対策品を製作。

投入検証から量産まで、SOLIZEのAM技術導入支援サービスでスピーディに対応

企画・構想段階から量産を見据えた3Dプリンター活用での成功

十分な検証を経て、2022年4月の量産ロットから、SOLIZE製治具と改造された光造形製治具が投入されました。この改造により、半年間で7万個に迫る生産において塗装不良を出さず、安定生産を続けることに成功しました。生産技術領域へのAM技術導入支援サービスは緊急対応としてのみならず、今後の新機種の立ち上げ時にもフル適用できることが実証されました。

今回特に検証できたことは、以下の3点です。

  1. HP Jet FusionのPA12は繰り返しの高温(140℃)⇔常温という厳しいUVコート環境に耐えることができる。
  2. 3Dプリンターだからこそ実現可能なアンダーカット形状を含む熱変位対策に理想的な設計により、3Dプリンターの量産治具への高い適応性と、それを活かすDfAMが有効である。
  3. 意匠性を有する製品の生産治具にHP Jet Fusionを活用することにより、製品へのフィッティング精度を高められる。

SOLIZEによる不具合の原因究明から始まった塗装不具合は、量産を見据えた材料と工法で無事に解決しました。またHP Jet Fusionの活用により、塗装工程などの厳しい環境に耐え得る量産用治具を、光造形や切削などの従来工法と比較して短期間で準備可能となり、今後の活用がますます期待されます。

User’s Voice

「今回製作していただいた治具に関しては問題なく良好です。また造形スペース・タクトの無駄をできる限りなくした上で、最良のコストを検討提示していただけました。この先もいろいろな形でお願いする機会が訪れると思うので相談させてください」

相模塗装株式会社 井上 文男 様

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※出典:アルテアエンジニアリング株式会社