導入事例
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自動車部品メーカー
サンデン株式会社
SOLIZEは、サンデン株式会社の大型モックアップ製作に協力しました。世界最大級の家電・IT見本市「CES 2025」への出展に向け、詳細な仕様書がない状態から提案を重ね、家電が中心の展示会場でも目を引く自動車のモックアップを短納期で完成させました。
サンデンは1943年に設立された、自動車用エアコンや冷熱関連機器業界でトップクラスの技術を持つメーカーです。「冷やす・あたためる」をキーテクノロジーに、カーエアコンを構成するさまざまな部品をグローバルに製造・販売しています。世界レベルの技術力をさまざまな製品に展開しており、主要顧客である自動車メーカーからの信頼に応え続けるとともに、さらなる省エネルギー技術によって地球環境負荷の低減に貢献しています。
サンデンが開発した「統合熱マネジメントシステム(ITMS)3.0」は、エンジン廃熱を利用できない電気自動車(EV)において、限られた熱エネルギーを統合的に管理し、効率的に活用する技術です。モーター、バッテリー、空調の熱を一元的に制御することで、航続距離の低下を抑えつつ、乗員の快適性を向上させます。さらに、冷媒ユニットと水を熱交換するインダイレクトシステムを採用することで、冷媒の使用量を最小限に抑えながら、安全性の向上も実現しています。
サンデンは、世界最大級の家電・IT見本市「CES 2025」への出展に向け、自社製品であるITMSユニットのモックアップ製作を予定していました。
「CES 2025」には、サンデンのグループ企業であるHisenseが出展し、Hisenseの主力家電を目当てに来場される方が大半です。Hisenseグループが自動車業界に参入したことをいかにアピールできるかが重要であり、サンデンが特に注力している展示会の1つです。
発注から2ヶ月半という短納期かつ具体的な仕様書がないなかで、SOLIZEは丁寧なヒアリングを通じてサンデンの実現したい機能や完成イメージを引き出し、具体的な仕様とスケジュールを提案しました。その活動が評価され、複数の会社からSOLIZEが採用されました。
ITMSの仕組みをどのように表現したら伝わるのか、両社でさまざまなアイデアを出し合い、整合を重ねる日々が始まりました。
スピーディーに対応するため、手書きの図やコメントですり合わせを実施
サンデンは過去にもITMSのモックアップを展示しており、これまでは四角い台の上にITMSを載せていました。しかし、その見せ方ではITMSが自動車のシステムであることがわかりづらいため、「自動車のモックアップの中にITMSを設置し、ITMSを引き立てつつ迫力のある魅力的なデザインにしたい」と希望していました。
自動車本体の3Dデザインデータをサンデンから共有いただき、そのイメージを具現化するための提案とすり合わせを行いました。材質、組み立てやすさ・運びやすさを考慮した部品や配線の位置をSOLIZEから提案し、部品の収納に関しては「本物の車のようにトランク部分を開けて部品を収納できるようにしたい」との要望に合わせ、トランク部分の蓋をひもで開けられるような仕組みにしました。
1/1スケールでの製作は初めてだったため、3Dデザインデータと完成品とのギャップについて想像がつかず不安もありましたが、データを現実のものにするというこれまでに培った技術を用いて理想の形に仕上げました。
ITMSモックアップの3Dデザインデータ
車のトランク部分を開けると、部品が収納されている
SOLIZEは、ITMSの中核部品であるHVACユニットの透明化の要望に応え、形状簡素化を提案しました。
HVACユニットは、乗員に快適な温度の空気を作り届ける装置です。普段は隠れているHVACユニットを可視化することで、その仕組みをわかりやすく、来場者の興味を引くために、透明の光造形樹脂を使用しました。
HVACユニットは本来複雑な形状をしているため、3Dプリンターでそのまま再現すると構造がわかりづらくなる点と、細部を磨くことができず透明度を保てないという問題がありました。
そこでSOLIZEは、形状を簡素化しつつHVACであることがわかるように設計し、特に透明度にはこだわり、もっとも見せたい箇所は念入りに磨き、目を引くよう工夫しました。
HVACユニット
形状を簡素化したHVACユニットのモックアップ
磨く前のHVACユニットのモックアップ
ITMSの働きを直感的に理解できるよう、システムにおける温度変化を電飾の色によって表現することで、車両内における熱交換プロセスや、温風・冷風の生成メカニズムがわかるようにしました。
このメカニズムを表現するには電飾の色合いが肝心なため、LEDカバーの素材や塗装にこだわりました。特に白色塗装は光の色合いを左右するため、数パターンのサンプルを用意し確認しました。
また、サンデンから「来場者にITMS3.0で作られた温水と冷水を体感いただけるよう、水槽を設置したい」との要望があり、そこに設置される水槽関係の電飾についても光り方や配置のしやすさを考慮した形状を設計し、提案しました。
1つの水槽に温度の異なる2種類の水を入れるため、水同士が熱交換しないよう断熱を兼ねた仕切りを設けました。水漏れ対策も重要であったことから、構造検討および確認作業を入念に行いました。
その結果、光で引き付けて水で驚きを与えたいというサンデンの思いを形にし、来場者に届けることができました。
「CES 2025」は米国で開催されるため、製作した大型モックアップが長距離輸送に耐えられることが必須でした。そのためSOLIZEは、その負荷に耐えられる素材・構造を提案しました。
車両モックアップは頑丈でありながら軽量にすることを基軸に設計・製作を行いました。ベースとなる土台には軽量かつ丈夫なアルミフレームを採用し、ボディ本体は軽量性と加工性を兼ね備えたFRPを使って造形しました。
HVACユニットは通常の樹脂の厚みでは破損する可能性があるため、肉厚をつけて造形しました。輸送の際は車両モックの負荷軽減の観点から、HVACユニットのみ取り外せる構造を提案しました。
その結果、米国までの輸送・展示会を経て、日本に戻っても壊れることなく、来社されたお客さまにもご覧いただけたとご報告いただきました。
「こういうものをつくりたい」というサンデンの完成イメージと要望をもとに、それをより良く実現するため、SOLIZEはさまざまな提案を行いました。
予算と納期が限られるなか、すべてを細部まで作り込むことには限界があるため、展示の目的に合わせて重要な部分は作り込み、重要度が低い部分はシンプルにすることで、QCDバランスを最適化しご満足いただくことができました。
1/1スケールのEV車という非常に大きなモックアップ製作はサンデンとして初の試みでしたが、無事に納期に間に合い、家電が中心の展示会場でも目を引く、わかりやすく美しいモックアップが完成しました。
SOLIZEは、たとえ指示書や図面がなくても、イメージをいただければ形にします。今後もお客さまのお役に立てるよう、SOLIZEにお任せいただくからには最高のものを一緒に作り上げたいとの思いでお客さまに寄り添い、チーム一丸となってものづくりをご提案します。
左から
R&Dセンター 先行技術開発ユニット A-4セクション リーダー 加藤様
R&Dセンター 先行技術開発ユニット A-4セクション デザイナー 藤様
R&Dセンター ITMS開発ユニット T-1セクション 佐藤様
R&Dセンター ITMS開発ユニット T-1セクション 工藤様
ITMSの特長についてお聞かせください。
佐藤様:
ITMSは、電気自動車向けの熱マネジメントシステムのことです。電気自動車にはエンジンがないため、廃熱を使って暖房することができません。特に冬は暖房を得るために電気ヒーターを用いる必要がありました。しかし、その方法は効率が悪く、走行距離の短縮を招いていました。そこでITMSを採用することで、外気から熱を取り入れて暖房に活用することで、バッテリーの消費を抑制することができます。また、モーターやバッテリーを適切な温度に保つことで、人だけではなく車両部品の快適性も追求しています。
今回製作したモックアップでは、モーターやバッテリーが光るように演出したことで、ITMSが空調だけではないということをアピールできたと思います。
SOLIZEに見積り依頼をしたきっかけや、発注の決め手をお聞かせください。
工藤様:
透明のHVACをつくれる会社を探していたところ、SOLIZEを紹介されました。カーモックの製作をお願いできるかを相談したところ、非常にポジティブな回答をいただけたため、依頼するならこの会社かもしれない、安心してお任せできそうだと感じました。また、初対面とは思えないほど話しやすかったので、一緒に仕事がしたいと思ったのもきっかけの一つです。
SOLIZEさんは、金額面とデザイン面での納得感がありました。他社にも相談していたのですが、日程がタイトだったこともあり1社には断られてしまいました。SOLIZEの協力がなければ頓挫していた可能性もあり、本当によく間に合ったなと思います。
SOLIZEとのやり取りはいかがでしたか。
佐藤様:
サンデンの窓口が一元化されていなかったため、多くの関係者からSOLIZEさんに連絡をしていたと思われます。サンデン内の意見の相違もあったと思いますが、SOLIZEさんが適切な落とし所を見出してくれました。
工藤様:
多い時は週に2、3回ほどミーティングを行っていましたが、翌日にはサンデン内で話が変わることもあり、ゴールに到達するまでに時間がかかりました。
製作にあたり苦労した点をお聞かせください。
藤様:
依頼のタイミングが遅かったことが一番の問題でした。こんなものを作りたいという構想は早い段階で決まっていましたが、当時誰も作り方がわからず手探り状態で、いろいろな会社を当たっていたため遅くなってしまいました。
デザインに関しては依頼後、あまり苦労はありませんでした。後戻りすることがないよう、こまめに確認してくれたので助かりました。
工藤様:
HVACに関しては、苦労したというより、SOLIZEさんに頑張ってもらった感じです。サンデンからはデータの提供と、要望を伝えただけでしたが、細かい部分の構造変更や、より綺麗に見せるための提案などを時間がないなか、ぎりぎりまでやっていただいた結果、とても満足いくものができました。
電飾に関しては、営業側と設計側で求めるところが違うので、良い落としどころを見つけるのが大変でした。
佐藤様:
サンデンの社内整合がうまくいっていないところが多かったかもしれません。デザインデータから短納期で、よくあれだけのクオリティのものができたなと思います。サンデンは「ごはん系のおいしいものください」くらいのことしか言っていませんでした。欲しいものがチャーハンなのかひつまぶしなのかわからないなか、SOLIZEさんが丁寧にヒアリングをしてくれたおかげで欲しいものが出てきた、という感じです。本当によくあれでできたなと思います。
完成したモックアップの感想をお聞かせください。
加藤様:
褒めるところしかありません。堂々と胸を張って見せられるものができて嬉しいです。
藤様:
造形の再現性、仕上がりの品質、どこをとっても満足です。途中、確認に行った時は見ただけで嬉しくなり、その後ずっとニヤニヤしていました。いまだに見ているとニヤニヤします。長年サンデンにいますが、おそらく展示会用のモックアップで最高傑作だと自負しています。
展示会での来場者の反応はいかがでしたか。
佐藤様:
熱の動きを光で表現するという手法は昔からありましたが、あそこまでのレベルで仕上げたのはおそらく初めてで、いろいろな方から「素晴らしいね」という声をいただきました。家電ショーの家電メーカーのブースにあるカーモック、という立ち位置の割に、かなり多くの方が写真を撮られていました。また、インフルエンサーの方々が動画を撮影されたり、地元メディアの方がインタビューに来られたり、来場者に対してインパクトを残せたと思います。
今後SOLIZEに期待することをお聞かせください。
加藤様:
造形物として完璧なものを作っていただいたので、展示会のなかでもモノとしては遜色ないかと思います。ほかのブースでは映像や照明と連動していたりするので、今後はさらに一歩進んだモックアップの見せ方をしていきたいです。次の案件もすでにSOLIZEさんに相談しはじめているので、ぜひご協力いただきたいです。
藤様:
今後世間的にさまざまな演出が出てくると思います。なかでもCESが開催されるラスベガスは最先端で、サンデンとしてみすぼらしいものは展示できないので、今後のグレードアップにぜひお付き合いいただきたいです。せっかく良いモックアップを作っていただいたので、中身を変えながら今のものを長く使っていきたいです。
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