導入事例

自動車ボディ骨格構造を革新する新たな成形プロセス「STAF®」の展示用モックアップを製作

部品加工

住友重機械工業株式会社

住友重機械工業株式会社のSTAF®(Steel Tube Air Forming)のモックアップ製作に協力しました。STAF®は住友重機械工業様の特許工法であり、世界で唯一の製造システムです。STAF®の魅力を展示会でより伝えやすくするために、モックアップを製作しました。

住友重機械工業株式会社について

STAF®(Steel Tube Air Forming)とは

STAF®とは、自動車のボディやフレームを大幅に軽量化できる製造システムです。特許工法であり、世界で唯一の製造システムです。
STAF®の特長は、
・プレスとブローフォーミングを組み合わせ、材料の加熱・成形・焼き入れを金型内でワンパックで行うシンプルな成形方法
・フランジ付き連続異形閉断面構造の成形と、焼き入れ材(PHS)による材料の高強度化の両立
です。
これにより、STAF®で加工した部材は、従来よりも「強く、軽く、シンプル」に仕上げることができ、自動車ボディやフレームの軽量化に貢献します。

 

STAF成型品の断面(フランジ付き連続異形閉断面構造)

STAF®の量産工程を説明するモックアップを短納期で製作

住友重機械工業様は、2016年頃からSTAF®の本格的な開発と営業活動を行ってきました。これまで国内外の展示会に出展し、自動車業界における認知度を高めてきましたが、2025年5月時点でSTAF®の量産ラインの実績がないことで、設備導入を検討されているお客さまに、設備のイメージが伝わりづらいという課題がありました。そこで、今回STAF®の量産工程を説明する設備モックアップを製作することとなりました。
モックアップに関して決まっていない点が多いなか、納期が刻一刻と迫っており、他社でも対応が難しい状況下でSOLIZEに相談がありました。住友重機械工業様が表現したいことやクオリティ要件の詳細を伺い、実現方法の検討と提案を行いました。
提案時点で納期まで2ヶ月を切る短期間での製作が求められるなか、完成データをいただき、SOLIZEでデータ作成・造形・塗装を進めました。

STAF設備

STAFのモックアップ

モックアップ製作のポイント

- 再現性とスピードを両立する、SOLIZEのデータ作成

データ作成は、お預かりしたデータの色分けや形状の簡素化を行い、1/25の縮尺に変換しました。この工程は、完成品の品質を左右するもっとも重要かつ時間を要する工程です。
データ調整は、単に全体を縮小すると、縮小により造形できないパーツや、重要なパーツが小さく目立たなくなるなど課題が発生します。そのため、各パーツの縮尺や配置の調整、場合によってはパーツを省略するなど、いかに本物らしく見せるかの再現性を重視します。SOLIZEは長年の経験で培ったデータ調整力による再現性を強みとしています。

データを調整する様子

モックアップを使って説明する様子

今回のモックアップは大規模設備のため、データ量が膨大かつ住友重機械工業様からのご要望でパーツが細かく色分けされており、その数はアセンブリ前で200を超えていました。
納期を優先するため、細かい色分けが必要なパーツの色数を減らす提案をした一方で、単色塗装では本物感が薄れるため、SOLIZEがバランスよく2色使いの塗装を行うなど、本物らしく見せる工夫をしました。
確定データは随時調整を行い、変更と提案が必要な場合はその都度相談と確認を行っていましたが、膨大なデータ量かつ短納期ということもあり、データ調整の多くは基本的にSOLIZEにお任せいただきました。

具体的なデータ調整例としては、住友重機械工業様の提供データからネジや板の数を減らしたり、色分けを簡素化したりしています。

ボディの色分けを省略し、ネジの個数を減らして造形の再現性を担保
(右:SOLIZE作成データ 左:お客さまデータ)

ネジの色分けを省略し、下部ラインの板の枚数を減少
(右:SOLIZE作成データ 左:お客さまデータ)

色分けを省略したパーツもありましたが、完成後のモックアップをご覧いただいた住友重機械工業様からは、「細部まで作り込まれていなくても十分、シンプルで分かりやすくなった」とご評価をいただきました。

- QCDを満たすための柔軟な工法選択と提案

モックアップの中でも中心に配置される成型機は、住友重機械工業様の「パリッとした見た目にしたい」という要望もあり、このラインの中でもっともきれいに見せたい重要な箇所です。そこでSOLIZEは、成型機の正方形の枠と床板部分を切削加工で、文字はUV印刷で製作することを提案しました。
今回のモックアップ製作で使用した3Dプリンターは粉末造形のため、表面がざらざらとした質感になり、文字の色がきれいにのらない懸念があったため、この部分は切削加工が最適と判断しました。
この工法選択により、住友重機械工業様の「パリッとした見た目にしたい」という要望を実現しています。

板状のパーツにUV印刷

板状のパーツにUV印刷

- 造形品を自由に配置できる展示台

住友重機械工業様からは、モックアップを展示会だけではなく、レイアウト検討の場でも使用したいという要望もありました。
そこでSOLIZEは、各部品の設置に磁石を使用することを提案しました。磁石を用いることで、部品の配置の自由度が上がるだけではなく、ある程度の変形が生じても組み付けられなくなる事態を防ぐことができます。まだ正確な配置や展示する設備部品が決まっていなかったことから、この仕様は好評でした。

具体的な構造は、下図のとおりです。
展示台の天板上部には鉄板を内蔵し、各造形品の底面に磁石を埋め込むことで、展示台上で各パーツを自由にレイアウトできる構造としました。今回は全パーツ合わせて約400個もの磁石を使用しました。また、副次的なメリットとして、磁石によってラインや成型機部品の展示状態が安定する効果もありました。

提案した展示台の構造

展示台

造形品の底面には磁石を埋め込み(画像は四隅への埋め込み例)

また、展示台のカッティングシートの色にもこだわりました。特に色指定はありませんでしたが、住友重機械工業様から「工場ラインにありそうな色味」という要望を伺い、SOLIZEにて色を選定し、住友重機械工業様にご満足いただける仕上がりにすることができました。

- 配置や梱包を考慮した仕掛けの工夫

住友重機械工業様から、「レールの上に金型装置を置いたり、動かしたりできるようにしたい」という仕掛け要望をいただいていましたが、それ以外の箇所については、特に仕掛けの要望はありませんでした。しかし、データ調整を進めるなか、追加で仕掛けを盛り込む工夫を施しました。
たとえば、金型装置には元データにタイヤが付いていたため、そのタイヤを動かせるように造形しました。これにより、単なる着脱だけではなく、レールの上をタイヤで転がせる仕掛けにしました。
また、搬送ロボットについても、配置や梱包の際にアームの向きが動くほうが利便性が高いと考え、組み立て時にアームが可動する設計にしました。
短納期でも、住友重機械工業様の期待を上回る仕上げと実用性に加え、少しの遊び心も入れた提案を行いました。

金型装置とレール

搬送ロボット

- 配送を考慮したパーツごとの梱包

SOLIZEでは、配送時の安全性を考慮した梱包を行っています。展示会場までは宅急便での輸送を想定していましたが、今回はパーツが非常に多くて細かいため、梱包方法によっては破損のリスクがありました。そこで、各パーツを小分けし、パーツごとにスポンジを切り抜いて専用の梱包を作成しました。
展示会で使用するモックアップのため、配送時に破損しないことは重要です。SOLIZEは、単に製作して終わりではなく、「どうすればより使いやすく、安全にお届けできるか」を考慮して対応しています。
住友重機械工業様からは、「展示会でも破損することなく、梱包もしやすかった」とご評価いただきました。

梱包の様子

梱包の様子

納期を常に意識したSOLIZEの提案と進行

今回は、住友重機械工業様内で配置するパーツの確定が遅れたこともあり、データが揃うまでに時間を要しました。しかし、そのような状況下でも、納期を遵守するため、作業可能なパーツから順次データ作成、造形、塗装を並行で進め、無事に納期を守ることができました。また、「できないことはできない」と率直にお伝えし、期限を明確に提示することで、住友重機械工業様にもご協力いただきながら、進行管理を徹底しました。
仕上がりにもご満足いただき、住友重機械工業様が重視していた「STAF®部品を量産するための設備・システムを、実際の工程・設備システムの構成に忠実に再現してモックアップを製作する」という要望を実現することができました。展示会当日も、設備の説明がしやすく、インパクトのあるモックアップとして来場者からも好評でした。

Interview

SOLIZEに発注された決め手についてお聞かせください。

仕様検討の段階から親身に相談に乗っていただき、データ作成から製作、仕上げ・組み立てまで一貫して対応してもらえる点です。
ほかのメーカーさんの場合、受け身な対応が多く、仕様が決まっていないと依頼できない場合が多いです。その点、SOLIZEさんはデータ作成ができるうえ、前のめりに提案していただけます。
今までのお取り引きを通じて品質に関しては信頼していたこともあり、ご依頼させていただきました。

SOLIZEの対応はいかがでしたか。

非常にスムーズかつタイムリーに対応していただきました。
今回のモックアップ製作においては、弊社内で元となる設備やレイアウトの仕様確定に時間を要し、製作途中で一部仕様変更が必要になることもありました。
営業担当の方だけではなく、技術・製造担当の方々とも適宜打ち合わせを重ね、タイムリーにご相談できたことで、短納期ながら、納期どおりに要望どおりのモックアップが完成しました。SOLIZEさんがいなければ、実現できなかったかもしれません。
 

完成したモックアップの感想をお聞かせください。

製作担当として、出来栄えに非常に満足しています。当社の要望に対して、これまでのモックアップ製作で培われた実績・ご経験を活かし、最適な仕様をご提案いただいたおかげで、非常に満足のいくモックアップを製作することができました。
サイズについても、SOLIZEさんにご相談のうえ1/25スケールにしましたが、大きすぎず、かつ見た目にインパクトがあり、ちょうど良いスケールだったと感じています。
各設備の色味や質感、形状も、打ち合わせどおりの出来栄えでした。
また、レイアウト変更や梱包を考慮し、各設備を磁石で固定したり、金型や金型段取り装置にも、着脱や可動の仕掛けを入れていただいたりしたので、設備の機能やレイアウト性の説明だけではなく、梱包やメンテナンス性など運用面でも良い仕様になったと考えています。

社内および展示会来場者の反応はいかがでしたか。

いずれも大変好評でした。
これまで設備の全体イメージは、映像やデータでしかお伝えできませんでしたが、今回製作した設備模型は非常にわかりやすく、お客さまからも「STAF®の製造工程を理解しやすい」との声をいただきました。特に展示会では、海外からのお客さまもいらっしゃいましたが、映像や試作品と併せて設備モックアップをご覧いただくことで、「非常にわかりやすかった」と好評をいただきました。
社内からも、「設備の説明がしやすい」「インパクトがあってお客さまからの評価が良かった」といったお褒めの言葉をいただきました。
 

今後の取り組みとSOLIZEへの期待についてお聞かせください。

今後は、今回製作した設備モックアップを社内展示場に設置し、工場見学などでご来社いただいたお客さまへのPR活動に活用したいと考えています。
また、STAF®製造システム自体も、今後さらに顧客価値を高めるための改善を進めていく予定ですので、それに合わせて設備模型も適宜改良できればと考えています。
今後の展望としては、ARやVRなどモックアップとデジタル情報を組み合わせた新しい展示コンテンツの制作にもつなげていきたいと考えています。新たなコンテンツ制作のご提案も、お願いできれば幸いです。

ほかの事例を見る


3Dプリンター 試作品製作に関するお問い合わせ​

お電話でのご相談

受付時間(平日)10:00-12:00、13:00-17:00​

3Dプリンター​ パーツ製造

3Dプリンター ​販売・保守

※3DEXPERIENCE、Compass アイコン、3DS ロゴ、CATIA、BIOVIA、GEOVIA、SOLIDWORKS、3DVIA、ENOVIA、EXALEAD、NETVIBES、MEDIDATA、CENTRIC PLM、3DEXCITE、SIMULIA、DELMIA およびIFWE は、アメリカ合衆国、またはその他の国における、ダッソー・システムズ (ヴェルサイユ商業登記所に登記番号B 322 306 440 で登録された、フランスにおける欧州会社) またはその子会社の登録商標または商標です。
※Ansys®、及びその他すべてのANSYS, Inc.の製品名は、ANSYS, Inc.またはその子会社の米国およびその他の国における商標または登録商標です。
※BETA CAE Systemsの会社名および製品の商標、商号、ロゴは、スイス、欧州、米国、およびその他の国の法律に基づき保護および/または登録されている場合があります。無断での使用または複製は固く禁じられています。
※出典:アルテアエンジニアリング株式会社