解析×3Dプリンターで生産現場のノズルを最適化
造形機のシーラント塗布効率化事例
金属3Dプリンター(金属造形機)のメンテナンスでは、チャンバーの合わせ面部分に使用しているシーラントが劣化した際に、シーラントを再塗布する工程があります。この工程では、塗布に求められる厚みに対して市販ノズルの出口径が小さいことに加え、チャンバー天井部分は姿勢的に塗布しづらいことから、シーラント材を塗布した後にニトリル手袋を装着した手でならすという作業が必要になっていました。SOLIZE PARTNERSでは、この手作業に伴うバラつきと工数の課題に対し、CFD解析を用いてノズルの出口形状を最適化することで、作業工数を90%削減する改善を実現しました。本コラムでは、その具体的な取り組みについて紹介します。

目次
シーラント塗布工程における課題
金属3Dプリンターのチャンバー内合わせ面部分へのシーラント再塗布作業では、市販のシーラント用ノズルをそのまま使用していました。しかし、塗布に求められる厚みに対してノズルの出口径が小さいことに加え、チャンバー天井部分は姿勢的に塗布しづらいことから、シーラント材を塗布した後にニトリル手袋を装着した手でならすという工程が必要になっていました。
しかし、この手作業には次のような課題がありました。
- 塗りムラが生じやすく、シーラントの厚みに手前側と奥側でバラつきが出てしまう
- 作業者ごとの技量差により、仕上がりにバラつきが生じる
- 1点あたりの作業時間が約30分かかっており、工数負荷が大きい
これらの課題を解決するため、SOLIZE PARTNERSでは専用ノズルを製作し、ノズルのみで塗布を完了できる工程への切り替えを検討しました。
手加工によるクイックトライで要件を洗い出す
いきなり3Dプリンターで最終形状を製作するのではなく、まずは手加工によるクイックトライを行い、ノズルに求められる要件と課題を洗い出しました。手加工で複数パターンのノズルを試作し、実際に塗布した結果を確認したところ、課題は「品質」と「作業性」の2つに分けられることが分かりました。

図1 手加工によるクイックトライで洗い出した品質・作業性の課題
品質の課題
手加工で長穴を空けることにより幅広にシーラントを塗布することは可能となりましたが、シーラントの断面を確認すると、手前側から奥側にかけて厚みにバラつきが生じていました。シーラントを均一に塗布できるようにノズルの出口形状を改善する必要がありました。
作業性の課題
特にチャンバー天井部分への塗布では、ガンを水平に保つ姿勢を維持することが難しく、作業者の負担になっていました。また、ノズルを移動させながら塗布する際に位置がぶれやすいことも、品質バラつきの一因となっていました。
これらの結果から、対策の方向性を「ノズルの出口形状の変更」「ノズルへの角度付け」「位置決めガイドの追加」の3点に整理しました。
CFD解析を用いた出口形状の最適化
出口形状の最適化にあたっては、試作を繰り返して現物で確認する方法では時間がかかるため、CFD解析を活用しました。
まず、実現象を解析上でどのように解釈するかを検討します。塗布したシーラントの厚みにバラツキがあるということは、分厚いところのシーラント吐出量が多く、薄いところのシーラント吐出量が少ないということです。局所的な流量の傾向は流速の分布と同じと見なせますので、解析による流速分布が実現象と一致するかを確認しました。手加工を模した四角穴形状で解析を行い、「手前側の流速が速い」という傾向が解析でも再現されることを確認し、流速分布が均一になるような出口形状を解析によって検証した上で試作を行うこととしました。
そのうえで、出口形状の先端側・根本側の寸法を変えたパターン(先端側4mm×根本側1〜3mmなど)でパラメトリックスタディを実施し、流速分布を比較しました。その結果、先端側4mm・根本側2mmの組み合わせにおいて、出口全体の流速が最も均一になることが分かりました。この形状を採用したノズルで塗布した結果、手前側と奥側の厚みのバラつきが改善されました。
さらに、作業性の課題に対しては、ノズル先端に角度をつける屈折構造と、位置ズレを防ぐための位置決め構造を形状に組み込み、姿勢の改善と位置決めの安定化を図りました。

図2 CFD解析による出口形状のパラメトリックスタディと、屈折構造・位置決め構造の追加
3Dプリンターでのノズル製作と導入効果
CFD解析で導き出した最適形状は、3Dプリンターを用いて製作しました。3Dプリンターであれば、パラメトリックスタディで検証した複雑な出口形状や、位置決め構造・屈折構造を一体化した形状であっても、金型を必要とせず短期間で試作・製作することができます。
新ノズルの導入により、以下の効果が得られました。
1. シーラントを一定の幅と厚みで塗布できるようになった
2. 作業者による仕上がりのバラつきが改善された
3. 作業時間が約30分から3分に短縮され、作業工数を90%削減した

図3 新ノズル導入によるBefore/After比較。作業工数を90%削減
解析を用いて出口形状寸法の最適値を事前に絞り込んだことで、試作回数を抑えながら品質改善を達成できた点も、本事例のポイントです。
今後の展望
本事例は、3Dプリンターとシミュレーション解析を組み合わせることで、生産現場の小さな治工具であっても、データに基づいた設計改善が可能であることを示す一例です。今回のような小規模なノズル・治具の改善は、生産技術領域における現場改善の中でも着手しやすいテーマであり、他の塗布・噴出系の工具や設備部品への応用も期待できます。SOLIZE PARTNERSでは、今後も社内実践で得られた知見を蓄積し、生産現場のさまざまな課題解決に活用してまいります。
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SOLIZE PARTNERSでは、設計、解析、3Dプリンティングの技術を組み合わせ、お客さまの生産現場における課題解決に貢献しています。3Dプリンターの導入・活用支援だけでなく、CFD解析をはじめとするシミュレーション技術を組み合わせることで、治具・ノズルなどの小規模な部品においても、データに基づいた効率的な設計改善を実現します。生産技術領域における設備改善や作業効率化にお悩みの方は、お気軽にお問い合わせください。






